やりたいこととやりたくないことははっきりしてる
岡元:父親が大工ってこともあって昔から建築業界を見てきたけど、すごい量の木を捨てるんだよね。例えば発注ミスで間違った木材が届いたりする。返品する配送のコストなどを考えると、廃棄処分にしたほうがお金はかからない。
でもさ、最大辺が何メートルもある無垢の板は輪切りにした大木の直径からしか取れないのに。その木がその太さに育つまでにはいったい何百年かかったんだろう…。
そんなことをいつも考えてる。
リサイクルとか持続可能ってワードが一般的になって、プラスチック削減にはみんな敏感になっているけど、むしろプラスチックはまだ作り出すことができるでしょ。でも樹齢何百年の木は、そこまで育つのに気の遠くなるほどの時間がかかるじゃん?
だから基本的に「捨てない建築」をやりたい。
斉藤:僕もいまの仕事をしていて疑問はあちこちで感じるかな。情報社会で目が肥えたお客さんが増えて、国産クロスのカタログの中には気に入った柄がないって言われる。それでネットで見つけたこの輸入クロスを貼って欲しいと頼まれたり。
多くの工務店は、お客さんにそう言われたら「はいわかりました」って言いなりじゃない? 元請け会社から「ここにはこれを貼るように」って指示される場合もあるしね。でもさ、輸入クロスは見た目がもちろん美しかったりセンス良かったりするけど、反面すごく薄くてデリケート。メンテナンスも国産のように汚れたらサッと拭けばいいってもんじゃなかったりする。
飯塚:見た目がイイってだけで建材を選ぶのは簡単だけど、選んだものに愛着を持って「共に暮らしていかなくちゃいけない責任」があると思う。だからお客さまに提案するときも、いいことばかりじゃなくデメリットも全部伝えたほうがいいよね。
岡元:「無垢材が好き」って人でも、反りなんかの経年変化も含めてOKなのか、それともその雰囲気が好きだから無垢材に見える合板でいいのか。どっちが良い悪いじゃなくて、お客さんそれぞれに合うスタイルを提案できるのが自分たちの強み。それが結果的に双方にとって良い選択になるんだ。環境にとっても。
飯塚:私たち、イメージと中身にギャップがあるって驚かれること多くない? 最初は「とりあえずセンスが良くておしゃれな部屋にしてほしい」って依頼なんだけど、打ち合わせしているうちに、ただおしゃれなリノベーションをやってる会社ではないって気づいて戸惑われたり(笑)。
岡元:それはあるね。でもセンスの良さって見た目だけじゃなくない?
「自分はあまりセンスがないけどセンスのいい部屋で暮らしたい」っていう人の希望は叶えたいし、そういうお客さんが喜んでくれるような提案をするのが腕の見せ所だけど、それだけで終わらせたくはない。
最初にも話したけど、ひたすらコスト重視の仕事だけはしたくないな。
斉藤:そういうポリシーっていうかこだわりは、親父さんや親方からの影響?
岡元:いや。『ONE PIECE』から。人生で大切なことは漫画から学ぶタイプ(笑)。